5月12日に奈良国立博物館に赴き、特別展「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」を見てきた。
今回の特別展では、大阪の藤田美術館の所蔵している文化財が展示されていた。特に世界でも3椀しか現存していない「曜変天目茶碗」の1椀を目玉として展示していた。展示された曜変天目茶碗は、12~13世紀頃の中国、国号でいうと南宋の時代につくられた天目茶碗である。曜変天目茶碗については、ある美術鑑定番組にて4点目の曜変天目茶碗が出てきたと話題になり、その真贋が一時期議論になっていたことで、陶器を知らない人でも聞いたことある名前であると思う。
まず、曜変天目茶碗は天目茶碗の1種である。その天目茶碗(別名、建盞)は、中国の福建省の建窯(けんよう)で大量に焼かれた茶碗である。その中で偶然に美しい光彩が生じた天目茶碗を曜変天目茶碗と呼ばれている。茶碗の中の模様は、広く暗い宇宙の中で光り輝く星々のような結晶が散りばめられたとても美しい模様であるとされている。また、科学的にも模様ができる理由も解明されておらず、再現は不可能であるとされている。
当初、筆者は「たかが茶碗でしょう」という浅はかな考えのもと最前列で見ることができる列に加わった。しかし、40分程度かけて実際に見てみると大きさは一般的なご飯茶碗の大きさでありながらも、広く暗い宇宙の中で輝く星々のごとく青く輝く美しさと再現不可能というミステリアスな模様に魅了された。曜変天目茶碗とは別に「菊花天目茶碗」という茶碗も展示されていたが、やはり曜変天目茶碗は天目茶碗の中でも別格であることを感じさせるものであった。
上記のように、曜変天目茶碗に魅了された筆者であるが、見ている途中で「この茶碗でご飯を食べ、お茶を飲むとどのような感覚に浸るのであろうか」というこれまた浅はかな考えをよぎらせた。それに関して言うと、茶碗であるため、ご飯茶碗で使おうがお茶を飲もうが、他の茶碗で同じ行為をすることであり、味に変化はないとは思う。
今回の特別展では曜変天目茶碗だけでなく《玄奘三蔵絵巻第一、二》や菱川師宣の《大江山酒吞童子絵巻》の上巻などの物語絵や《空也上人像》や快慶作の《地蔵菩薩立像》などの仏像が展示されており、満足のいく展示であったといえる。ただし、5月14日の後半の展示期間において展示される御堂関白藤原道長公の描かれている《紫式部日記絵詞》を見られないということに、しっかりと情報を集めてから見に行くべきだったと後悔している。
さて、本記事は特別展「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」を見てきた感想だけにしておく。実際のところ仏像における性質の変化について書きたいことはあるが、それはまた別の機会にする。
謝辞
本記事を読んでいただいた方々に感謝いたします。
私は、自分でもあきれるほどの遅筆家であります。一応月1で記事を挙げるように心がけていますが、記事が挙がらないこともあります。こんな遅筆家を温かく見守っていただけると幸いです。
尚、奈良国立博物館特別展「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」は6月9日までやっています。また、5月14日からは後半の展示になるため、国宝の《紫式部日記絵詞》や高階兼隆筆の春日明神影向図が展示されます。
見に行っていない方は、是非見に行ってください。