武部健一『道路の日本史』

今回のブログの記事は、このブログを書き進めることを習慣化する目的で、読書記録に方針を一時転換しようと考えている。そこで最初の読書記録は、武部健一の『道路の日本史』である。
1.本との出会い
この本と出合いは、筆者がよく見る動画配信サービスにおいて都市開発シミュレーションゲーム《Cities:Skyline》中心に実況をしている動画配信者による紹介である。その配信者は、武部健一を日本で道路の技術と歴史を網羅した人物であると評価している。私は、その評価を基にどのような本かと思い、紹介された日の翌日に本屋へ赴き購入した。
2.本の概要
さて、この本は2015年に中央公論新社の中公新書で出版された。この本は第1章から終章までの7章建てという構成で日本の道路の通史を書き出している。そして、著者がこの本を記したのは、はじめににおいて述べられており、自身が高速道路の建設に携わっているときに高速道路の計画路線に国分寺の遺跡がかかっていることを疑問の発端としている。そこで著者は、古代、中世、近世、近代や現代の道路の歴史を調べることで日本と道路の双方の歴史を鮮明に書き出そうとしている。
第1章では道路の通史を語るうえで外すことのできないとされているヨーロッパの道路史と中国の道路史を述べている。第2章では、古代日本に造られた七道駅路といった古代道について述べ、日本の道路史の黎明を書き出している。そのことによって、古代の道路と現代の高速道路の共通点である計画性と直達性であることを示している。第3章では、中世日本における日本道路史を整理し、古代の道路が衰退していく中で、それと異なる道路システムが形成されていく。第4章では、近世日本における道路史について述べ、江戸時代の道路の特徴を洗い出している。そのことにより、五街道の整備が現代の一般国道につながったということを述べている。第5章では近代日本における道路史を分析し、鉄道が中心となっていた近代日本において道路がどのような役割を果たしていたのかを述べている。第6章で、自身の経験を基に戦後の高速道路建設における過程を洗い出している。終章では、今後の日本における道路の展望と課題を述べている。
3.所感
この本は、日本の道路の通史を記している。古代・中世・近世・近代・現代とその時代において中心につくられた道路の特徴をとらえており、古代の道路と現代の高速道路の共通性を導き出している。そして、権力者の変化とともに主要となる道路の用途が変化していることが、分かりやすく書かれている。日本の道路の政治史として見ても面白いと思われる。
現代の都市政策において都市景観とかなり重要視されている。そうした中で都市において新しい道路を造るもしくは既存の道路を更新していくかが課題となっている。都市景観も考えたうえで道路の設計を考えていくことが必要であると考えられる。

初稿:令和元年6月2日

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