今回は、古典で上田秋成の『雨月物語』の巻之二 「浅茅が宿」を紹介する。
上田秋成は、享保19(1734)年に大坂で生まれで、養家(上田家)の家業の商人をしながら小説の執筆を行い、40代から国学研究に注力していった人物である。『雨月物語』は、彼の3作目の作品であり、9話の怪談・奇談からなる物語集である。
それぞれの物語の時代設定は、古いものは平安時代、新しいものでは江戸時代と様々な時代が設定されている。登場人物も崇徳院や西行などの実在した人物を出している。今回の浅茅が宿の時代設定は、戦国時代直前の15世紀半ばと考えられている。そして、登場人物は、下総(今の千葉県)の真間の勝四郎という元百姓、妻の宮木、真間にすむ漆間の翁が中心である。物語は、前半で勝四郎が京へ上って利を得てから真間に帰るまでの話を記している。その後、後半では戦乱によって荒廃した故郷の中にあった自宅に戻った後の妻宮木とのやりとりと次の日の家の荒廃の様子と妻の死の事実を知ったことによる悲しみの展開を書いている。
この話は、長編物語ではなく、短編物語であるため、私にとってとても読みやすい作品である。また、国学や和歌などを学んでいたために、物語の中に万葉集やなどの文献を引用している。だからといって難しい言葉を使っているわけではなく、書かれた時代も江戸時代であるため、平安時代の古文のように古語と現代語との意味の差の開きが少ないため、流し読みでもある程度理解できる。
「浅茅が宿」は「蛇性の婬」と合わせて溝口健二によって映画化されているため、気になる方は観ても良いかもしれない。また、私は岩波文庫で読んだが、ちくま学芸文庫や河出文庫では現代語訳がなされているため、現代語訳で読みたい方はそちらを読むことをお勧めする。
https://www.amazon.co.jp/雨月物語-岩波文庫-上田-秋成/dp/4003022033
初稿:令和元年6月10日